印刷用語－入稿

　印刷用語　入稿とは？

印刷業界やデザイン業界で耳にすることの多い「入稿」という言葉。どんな意味なのか辞書で調べてみると、「原稿を印刷所などに渡すこと」「原稿を著者から入手すること」などと書かれています。

　

かつて活版印刷時代の頃は、例えば作家が手書きで原稿用紙に記した作品を編集者が受け取り、編集者がその原稿を印刷所の組版部門に渡して雑誌や書籍の作成を依頼していましたし、写植時代の頃は同じ手書きの原稿用紙を編集者が写植オペレーターなどに渡して製本を依頼していました。これら、原稿を組版部門に渡したり写植オペレーターに渡したりすることを「入稿」と呼んでいたのです。

　

しかし現在では特にチラシやパンフレットなどのデザイン原稿に関してはDTPが発達したため必ずしも印刷業者へ原稿を渡すことだけを「入稿」と呼ぶわけではありません。例えば編集者がまとめた手書きのデザイン案やイラスト・ポジフィルムなどの原稿画像、デジカメで撮影した写真やスキャンしたデータなどをDTPデザイナーやオペレーターに渡し印刷できる状態のデータに作成してもらうよう依頼することも「入稿」と呼ばれ、実際、現在ではこの作業を「入稿」と呼ぶことが多くなっています。

　

また依頼を受けた印刷業者の営業担当が自社の製版部門へ原稿を引き渡すこともそうですし、広告主が宣伝してほしい内容をまとめたものを広告代理店に渡すこともやはり「入稿」と呼ばれます。原稿がラフスケッチからデータ完成に至るまでのどの段階に位置しているかに関わらず、「これを基によろしく」と次の段階を担う専門家や業者にそれを引き渡す行為が「入稿」というわけです。

　

一方で「入稿」と対を成す語として「出稿」という言葉があります。文字から推察すると「入稿」が「原稿が入る」というものであるのに対し、「出稿」は「原稿が出て行く」ということですから、同じ「原稿の受け渡し作業」でも「よろしく」と原稿を相手に渡して手放すことを「出稿」と呼ぶと考えられます。この原稿を「よし任せろ」と受け取る側ならそれは「入稿」。つまり原稿に対しそれを手放す側か受け取る側かで呼び方が異なるわけです。

　

ちなみにデータを印刷業者へ渡すにあたって、業者から「完全データでの入稿をお願いします」と言われることがあります。これは印刷業者側から見て、入稿されたデータを印刷に適した状態にするために何らかの手を加える必要のないデータ、つまりそのまま印刷にかけることができるデータということです。